第91章 ゼロの
そして、中から誰かが出てくるような靴音。
何故そうだと思ったのかは分からないが、直感的に梓さんでも、お客さんでもないと思った。
もしかすると、耳が勝手に覚えていたのかもしれない。
その靴音を。
「・・・!」
コナンくんがポアロの方に目を向けると、その表情は更に険しさを増した。
そこで私の予想は核心となった。
「これ、公安の刑事さんだよね?」
そう尋ねながら、コナンくんはスマホの画面をポアロの方にいる人物へと突き付けた。
きっとその画面には、風見さんが写っているのだろう。
「さあ、知らないけど?」
「・・・っ」
ああ、やっぱり。
零だ。
数時間前まで事務所に居たのに。
今度はポアロで。
・・・いや、風見さんと連携をとる為に、わざわざここへ来た可能性もある。
「ケガしてるね、風見刑事も・・・安室さんも」
・・・ホウキで掃く音。
ここからはコナンくんしか見えない。
ここに私が居ることは、まだ彼に気付かれていないとは思うけど。
それでも、妙な緊張感は全身を強く強ばらせた。
「つまり安室さんもいたんだよね?爆発現場に」
「・・・何の話かわからないな」
ここでコナンくんに協力的な会話をしないということは・・・やはり、毛利さんに関しての指示は零が行ったという事だろうか。
「サミット会場の下見をしてたんでしょ?」
それに関しては、間違いないだろう。
何よりこれに関しては、一瞬のものだが映像が証拠として残っている。
「きっとその時、テロの可能性を察知した。だけど、今のままじゃ爆発を事故で処理されてしまう。そこで容疑者をでっち上げた!違う!?」
「・・・・・・」
違うと言ってほしかったが、その質問に対して、彼は何も言わなくて。
無言の肯定、ということなのか。
「安室さんや彼みたいな警察官なら、パソコンに細工をしたり、現場に指紋を残すことだって可能だよね?」
耳を塞ぎたくなる。
でも、聞いておかなくてはいけない。
この件で私が被害を受けることは恐らくないだろうが、零が関係することであれば、それも無いとは言い切れない。
可能性は、ゼロには近いけれど。
何より、コナンくんや毛利さんが被害を受けている時点で、黙って見ている訳にはいかない。