第91章 ゼロの
「先程も彼らに説明した通り、押収したパソコンから、サミットの予定表や国際会議場の見取り図が出てきました」
そう淡々と説明する姿は、私の知る風見さんではなかった。
今は仕事中の・・・警察官。
「たったそれだけの証拠で手錠ですか?」
「私は任意同行をお願いしましたが暴れた為、公務執行妨害の容疑でかけたものです」
・・・なるほど、何故かは分からないが、何がなんでも毛利さんを犯人に仕立てあげたいのか。
風見さんが動いているということは恐らく・・・零も少なからず関わっているはずだ。
いや、もしかすると、零が命令していることかもしれない。
「どいて頂けますか」
それらの事実を頭の中で巡らせていく中、風見さんのその言葉に、何かが自分の中で抑えきれなくなって。
「ッ!?」
「如月さん!?」
気付けば、風見さんの頬を引っぱたいていた。
「これで私も、逮捕ですか?」
挑発的な態度で風見さんに言い放てば、彼は私に叩かれた頬に手を当てながら、私と視線を合わせないまま足を進めてきて。
「どいて、ください」
至って冷静に、でも威圧的に進んで来る。
自分でも、とんでもない事をしたのは分かっているのに。
今度は更に風見さんの腕を掴んでしまった。
「・・・この事は黙っておきますから、降谷さんの指示に従ってください」
その瞬間、私にだけに聞こえるように、風見さんは小さな声でそう言ってきて。
掴んだ腕をそっと離されると、そのまま毛利さんを連れてパトカーに乗ってしまった。
・・・何も、できなかった。
何も言い返せなかった。
とんでもない事をしでかしたことだけは間違いないけど。
「・・・っ」
私の傍をすり抜け、勢いよく階段を駆け下りたコナンくんは、パトカーの行先を肩で息をしながら見つめて。
その小さな背中に、胸が締め付けられる思いになった。
「コナンく・・・」
力無く階段を降り、彼の方へと近付こうとしたその時。
聞き馴染みのあるドアベルの音を耳にし、瞬時に足が止まった。
これは・・・ポアロのドアベル。