第2章 就職先
本来そのために今日は珍しく家を出たのだ。
久しぶりの職探しで正直何からして良いのか不安だったが、何とかするしかなかった。
「如月さん、パソコンとか使えますか?」
「え?・・・ええ、機械には強い方ですけど・・・」
唐突に何の質問だろう。戸惑いながら答えると、安室さんはそれなら、と続けた。
「もし良かったら、僕の助手として働きませんか?」
「安室さんの・・・助手・・・?」
「ええ、お給料ならご相談に応じますので」
思ってもみない相談だった。安室さんの元で働く興味はあったが、それはつまり。
「探偵業の・・・ということですよね?」
「そうなりますね」
いつの間にか入れてくれたコーヒーを私の前に差し出しながら答えた。
「あの・・・ありがたいお話なんですけど・・・私そんなに使えないと思いますよ・・・」
探偵業の助手という全く想像もつかない職業。
到底自分に務まるとは思わなかった。
「業務に心配があるのなら大丈夫です。僕の集めた資料などをパソコンでまとめて頂くだけで結構です」
安室さんへ伝えた通りパソコンなどの機械には強い自信がある。安室さんが言う程度の仕事なら自分にもできる気がした。
まだどこかで不安は残るが、どうせ職探しはしないといけないのだ。
「使えなかったら・・・遠慮なく切ってくださいね」
だったら今は信頼できる彼の元で働こう。
兄のことも分かったらすぐに教えてくれるだろうし。
「そんなことはないので大丈夫ですよ。それと、あまり自分を悲観的に見ないでくださいね」
「・・・すみません」
そういう癖があることは自覚があった。中々直せない悪い部分。兄にもよく言われたっけ。
「早速なんですけど、明日から来れますか?事務所って程でもないですけど、小さな部屋を借りてるんです」
場所はここからそう遠くないので、と言いながら安室さんは地図を書いて手渡してくれた。見ると丁度自宅とポアロの間の辺り。
「私の家の近くにあったんですね。結構長いこと住んでましたけど気付かなかったです」
「そこを借り始めたのは最近ですからね」
本当に探偵だったんだ、と改めて思う。正直ポアロの店員さんというイメージが今は強過ぎて。