第91章 ゼロの
「サミット中に爆発が起きてたら大変でしたね・・・」
そうなれば日本だけでなく、世界中がパニックに陥る。
・・・いや、パニックだけで済むだろうか。
「いやもう・・・警視庁、特に公安部は叩かれてますよ。サミット前に爆発事故が起きたんじゃ、しょうがないけど・・・」
「事故?」
高木刑事の言葉に引っ掛かったのか、コナンくんがその疑問をシンプルにぶつけて。
「あ、いや・・・現場の状況から最初は事故で処理されるはずだったんでね、つい」
「小五郎のおじさんの指紋が、現場にあったんだよね?」
そうか、勝手に私は事故だと思い込んでいたけれど・・・毛利さんの指紋が出たということから、今は事件になっているのか。
「うん、それを風見さんが見つけて、一気に事件性が出たんだ」
風見さんが・・・?
・・・なんだろう、この違和感。
別に、毛利さんの指紋が見つかったこと以外は、不思議なことじゃないのに。
「・・・?」
そんな会話の中、コナンくんも何かを考え込んでいるような様子だったが、突然何かに気付くとポケットからスマホを取り出して。
どうやら誰かから着信がきたようだった。
「高木刑事、ありがと!」
「気をつけて帰るんだよ!」
そう言ってコナンくんは、突然どこかに走り出してしまって。
「すみません、私もこれで。ありがとうございました」
「あ、いえいえ・・・!」
戸惑う高木刑事を横目に、走り出したコナンくんを慌てて追いかけた。
「蘭、どうした?」
それに追いつき、彼は持ってきていたスケボーを地面に投げ、足を置きながら電話に出ると、その声に驚いて。
ああ、これが工藤新一の声なのか。
蝶ネクタイ型変声機は手に取り見たことがあるが、直接使うのは初めて見た。
これ程のものとは・・・流石、阿笠博士の発明品といったところか。
・・・こんな時に何だが、分解してみたい欲が止まらない。
「!?」
電話の相手は蘭さんなのだろうが、会話の途中でその表情は何故か一変した。
深刻そうな、追い詰められた様な表情を浮かべると、彼はスケボーについているボタンを足で踏んでみせた。
「・・・どうしたの?」
コナンくんが電話を切った瞬間、食い入るように尋ねると、表情を変えないまま彼はゆっくり重そうな口を開いた。