第91章 ゼロの
「何があったの・・・?」
薄暗いその場所で、声を潜めながらコナンくんに尋ねた。
「あの後すぐ、蘭姉ちゃんから連絡が来てここに来たんだ。爆発があった国際会議場で、おじさんの指紋が見つかったって」
「指紋?」
どうして、毛利さんの指紋なんかが。
「毛利さん、あの国際会議場に入ったの?」
「おじさんは否定してる。僕も、可能性は低いと思ってる」
・・・確かに、あそこはまだ開業していない。
不法侵入以外では、頼まれでもしない限り入ることは難しいだろう。
「つまり、あの爆発は毛利さんが起こしたものだと疑われているって事・・・?」
「そういう事」
成程・・・と、納得して良いのだろうか。
あまりしたいものでも、できるものでもないが。
「それで、聞きたいんだけど」
「?」
ようやく呼ばれた理由に移り、彼の目に視線を移した。
「あの中にいる刑事さん、知り合いだよね?」
彼と風見さん、会ったことがあっただろうか。
まあ・・・知らなければ、あの時風見さんに盗聴器など仕掛けないか。
でも、風見さんからは黙っておくようにサインを受けた。
悔しいことにこういう時でも・・・いや、こういう時だからこそ、私は彼の・・・公安の味方についてしまう。
「・・・ごめん、特に覚えはないかも」
白々しいだろうか。
いや、それでも良い。
彼にはどうせ、嘘だとバレているのだから。
「じゃあ、もう一つ」
こっちの方が本題だと言わんばかりに声の低さが増すと、工藤新一の片鱗を見せられた気がした。
「安室さんに、会ったでしょ」
彼も相変わらず鋭い。
それとも、相変わらず私が分かりやすいのか。
「・・・無事ではあったよ」
何だか意味深な言い方になってしまったけど。
特にこれ以上の意味は無い。
零は無事だった。
それだけだ。
「爆発のこと、話してないの?」
「コナンくん以上に、公安の人って口は硬いんだよ?」
冗談をいうような口調で事実を言うと、彼は小さく眉間に皺を寄せた。
思うような情報が得られずもどかしいのだろうが、それは私も同じだ。
その上、事務所に居ろという零の命令に背いてここにいる。
本来黙っていてほしいとサインを送るのは、風見さんから私ではなく、私から風見さんへなのかもしれない。