第91章 ゼロの
「!」
その警察官と思わしき人の中に、見覚えのある顔を見つけて。
咄嗟にその人の名前を呼んで引き止めた。
「高木刑事・・・!」
「え?あ・・・っ、えっと・・・確か、如月さん・・・?」
私の存在に気付くと、高木刑事はこちらに近寄ってきてくれて。
「その節はどうも。どうされたんですか?」
彼とは、波土禄道の事件以来になるだろうか。
相変わらず刑事らしくない人の良さそうな人だが、今日はほんの少しだけ、彼からもピリついた空気を感じた気がした。
「高木さんこそ・・・何かあったんですか?」
これはまるで、家宅捜査のようだ。
そう言いたげに質問で返すと、高木刑事はバツの悪そうな顔で、私から視線を逸らした。
「ええ、まあ・・・ちょっと」
その歯切れの悪い物言いに、何か嫌な予感がして。
「あっ!如月さん!?」
高木刑事は、突然走り出した私を止めようと声を掛けたが、それに応えることはなく、数人の警察官の間をすり抜け二階の探偵事務所へと向かった。
「何かの間違いだ!調べたって何も出やしねーって!」
「!?」
そこから聞こえてきたのは、毛利探偵の怒るような叫ぶ声。
開きっぱなしのその出入口に顔を出すと、中には数人の警察官だと思われる人と、毛利探偵、そしてコナンくんと蘭さんの姿があって。
「如月さん・・・!」
「コナンくん・・・どうしたの、これ・・・」
明らかに、ただ事ではない。
そう思いながら、探偵事務所の中を見回していた時、とある人物と目があった。
それは最近会うことはなくなっていたが、何度も会ったことのある人物。
「か・・・」
風見さん。
その名を口に仕掛けた時、彼は人差し指を口元に当て、それをしないように私に静止をかけた。
何故ここに、風見さんが。
いや、それよりも・・・。
「・・・っ」
彼も、零のように傷だらけだ。
手当ては済んでいるようだが、その傷はまだ新しい。
きっと彼も、あの爆発事故に。
「如月さん、ちょっと・・・」
コナンくんに連れられ外の廊下へと出ると、そのまま三階に続く階段へと上がっていった。