第91章 ゼロの
「・・・っ」
とにかく、零に連絡を。
そう思いスマホを手に取るが、上手く操作できない。
手が、震える。
「・・・・・・ッ」
落ち着け。
落ち着け。
落ち着け・・・っ。
何度も何度も頭の中で体に言い聞かせては、一つ一つ確実にボタンを押していって。
それを耳に当てる頃には息が上がり、視界が歪み、立っているのがやっとな状況になっていた。
「如月さん・・・」
コナンくんの不安そうな声が聞こえた気がした。
でも、それに応える気力なんて無くて。
「・・・・・・っ」
繰り返されるだけのコール音に、不安は積み重ねられていって。
耳にこびりつくくらいには聞いた。
けど、それに応答は無くて。
そんな中、テレビからは爆発についての内容が更に流れてきて。
『まだ開業前だった為、利用客はいませんでしたが・・・サミット警備の下見をしていた警官数人が死傷したとの情報が入っています』
「・・・!!」
警官の、死傷者。
・・・そんな。
「如月さん!?」
崩れ落ちるように床へへたり込むと、全身の力が抜けてしまっていて。
慌ててコナンくんが駆け寄ってきてくれたが、やはりそれに返事をするものが何も残っていなかった。
「・・・僕も安室さんに何度か掛けてみたけど、ダメだった」
涙ぐむ私の背中を優しく摩りながら、彼はそう言って。
今どこにいるのかも、何をしているのかも、何も分からない。
この不安はどうやって吐き出せば良いのか。
今私は何をすべきなのか、何ができるのか。
・・・分からない。
「今、高木刑事にも聞いてみてるから。とりあえず、ソファーに座ってて」
コナンくんはそう言ってくれたが、体が思うように動かない。
・・・以前にも似たような状況はあったけれど。
あの時よりも確実な状況を目にしてしまった。
それは疑いようもない事実だ。