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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第13章 愛して※




「怖く・・・ありませんか?」
「へ・・・?」

それはさっきの出来事のことで。きっと手首を掴まれていたら、いくら透さんでもまたフラッシュバックを起こしていたかもしれない。

「・・・大丈夫、みたいです」
「それなら良かった」

安心したような顔で笑う彼の横顔にまた心臓の音が大きくなるようだった。

そのまま手を繋いだまま、透さんの車まで歩いた。道中は他愛のない話をして。
その時間がとても安心して心地良かった。

駐車場に着くと、繋いでいた手はゆっくりと離された。すっかり温まった右手で、少し冷たい左手を握り、透さんの温もりを分けるように温めて。

「さあ、どうぞ」
「失礼します」

透さんの車に乗るのは久しぶりのような気がする。前に乗った時は真っ黒なポルシェを追いかけた後だったな、と思い出しながら助手席へ乗り込んだ。

車だと事務所まではほんの少しの距離で。
駐車場に止めて事務所まで歩き、部屋に入って明かりを灯すと、室内はあの時と何も変わらない状態のまま。

「・・・お邪魔します」
「ただいま、でも良いんですよ」

戸惑いから透さんの顔を見るといつもの優しい笑顔で。少し恥ずかしさや躊躇いもあったけれど。

「た・・・ただいま・・・」

小さく言い直すと。

「おかえりなさい」

その言葉に胸が熱くなった。目に涙が溢れそうなのが分かったが、必死にそれを抑えた。
いつも誰もいない部屋に言っていた言葉。返ってくるはずのない返事が返ってきて。

おかえりなさい、という言葉がこんなに温かいものだったなんて。

その嬉しさを噛み締めるように部屋の中へと入った。

「何か温かいものでも入れましょうか」
「あ・・・、手伝います」

手荷物を部屋の隅に置いて、透さんのいる炊事場へ急いだ。

「ありがとうございます、ではそこにあるマグカップを出していただけますか」
「分かりました」

指をさされた戸棚を開くと、そこには柄形は同じだが色違いのマグカップが用意されていて。

「これ・・・」

まさか、私の為に用意してくれていたんだろうか。そう思いながらそれらを取り出して。

「せっかくなのでペアで揃えてみました。・・・嫌でしたか?」

困ったように頬を掻きながら笑う顔に、胸が締め付けられた。透さんがこれが良いと思って選んでくれたものだ。

嬉しくないはずがなくて。


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