第90章 二人の
「彼はどこまで知っていた?」
FBIの話を打ち切るように、話題はコナンくんへと戻された。
誰かと聞かれれば、ジョディさんから・・・と答えるつもりだったけど。
彼の鋭い勘が、働いてしまっただろうか。
「あの男が捕まるより以前にとっていた行動は、ある程度把握しているみたい」
そう話す頃には、彼はスーツから部屋着へと着替え終わっていて。
「ひなたは、どう考える」
「・・・?」
少しの間の後、突然そんな事を問われた。
首を傾げると、目の前に立った彼に顎を持ち上げられて。
「あの少年は、どうやって情報を得たと考える」
・・・視線を、離さないようにされている。
これは嘘をついたかどうか見極める為か、はたまた嘘をつかせない為なのか。
「警察関係者の誰かに盗聴器を仕掛けるのが手っ取り早いし、私でもそうしたと思う」
恐らく、実際そうだった。
述べた考えは嘘では無いが、隠し事をしていることに変わりはない。
なるべく正常な心音を保つ為に大きく呼吸をしたが、透き通った彼の瞳は、既に何かを見透かしているようだった。
「・・・だいぶ、助手らしくなってきたな」
強ばっていた表情はフッと軽くなり、顔を固定していた手は静かに外された。
「こ、これからどうするの・・・?」
「どうって?」
台所の方へと向かう彼を追いかけるように問えば、振り向きながら、何を?と確認されて。
「コナンくんのこと・・・」
まだこれ以上、探りを入れるのだろうか。
「今回のことは彼を巻き込んでいないことだから探りを入れてみたが、これ以上首を突っ込むようなら今度は僕から出向くさ」
・・・これで手を引くような子ではないと思うけど。
一応、聞いてくれるかどうかは分からないが、釘は刺しておいた。
せめて警察内部には手を出さないでくれると、こちらとしてもありがたいが。
「コナンくんのことも気になるが、僕はそれも・・・気になるところだな」
そう言いながら彼は、私の首からぶら下がるペンダントを、コンコンと指先で数回叩いてみせた。