第89章 夜桜と
「どうしてそう思った?」
彼のその問いに、昼間の彼らの会話や行動をなるべく詳細に伝えた。
なるべく、主観は抑えたつもりで。
それを聞いた彼も、やはり考えは私と同じところに辿り着いたようだった。
「・・・それで、何を話した?」
流石にその時の会話までは聞いていないか、と思った所で、真実を話すかどうかは正直迷ってしまった。
でも、隠した所で良い方に転がるとは思えないから。
「・・・情報屋のあの男が、亡くなったって」
正直に、コナンくんから聞いた事を伝えた。
「それはFBIの情報か?」
そう聞いてきた彼の表情が一瞬強ばったのを、見逃しはしなかった。
「ううん、コナンくんから」
それを伝えた瞬間、彼の強ばった表情はほんの少し和らいだものの、口からは深く大きな溜息が漏れてきて。
「全く・・・一体どこから情報を拾ってくるんだ」
それは、私も気になる。
彼には特別な情報網でもあるのだろうか。
今回のことはFBIだって知らなかった様子なのに。
・・・あんな事を言ってきたのだから、沖矢さんは知っていそうだけど。
「本当、なの?」
これが真実であれば、何を意味するのか。
流石にそれを聞くのは少しだけ怖かった。
「・・・ああ、自殺のようだが不自然な点も多い為、他殺じゃないかという話も上がっている」
一瞬、答える事を躊躇う様子を見せたが、彼はコナンくんからの情報と同じ事を教えてくれた。
「その男が、組織のことを探ってたっていうのも本当・・・?」
「・・・これは公安の中に調査を入れるべきだな」
私に答えを与える前に、彼はもう一度深い溜息吐いては指先を額に当て、項垂れながらそう呟いた。
確かに、いくら頭の回転が早く知恵の働くからと言っても、あの小さな探偵にこれだけ情報が漏れているのは少しおかしい。
・・・コナンくん自身が、公安の誰かと繋がりを持っているのだろうか。
とりあえず、零がそう返答するということは、この情報もやはり間違いでは無いということだろう。