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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第12章 迫る影




「仕事に限らず、暫くは夜に出歩かないでください」
「・・・はい」

透さんの言葉にただ頷くだけ。
今はそうする他なくて。

私の返事を聞いて、ようやく手首を掴む手を離してくれた。
さっきまで掴まれていた手首を反対の手でそっと触れる。あの男のも、透さんのも、そこにはどちらの感覚も恐怖も残っていて。

まだ震えも呼吸も落ち着きを取り戻さないが、今はこれ以上迷惑をかけないことだけを考えた。

「今日はとりあえず僕が家まで送ります。車は離れた場所に置いてきているので、徒歩で送っても大丈夫ですか?」
「はい・・・すみません」

目の前にいるのは、さっきまでとは違ういつもの優しい透さんで。
でも、すっきりとしない複雑な感情。
申し訳なさ、やるせなさ、苦しさ、恐怖・・・。
それ以上に何かを感じるが、言い表せないそれを抱えながら、二人で家に向かって歩き出した。



透さんはゆっくり歩く私に歩幅を合わせてくれていて。お互い何も話さず、ただ無言で歩き続けた。

「・・・あの」

その沈黙が気まずくて、何でも良いからと話題を探した。私が話しかけると、透さんは私を見て足を止めた。

「えっと・・・その・・・」

必死に探したけれど何も見つからなくて。目を右に左に泳がせながら、段々と顔を俯かせた。
その様子を黙って見ていた透さんが突然くすくすと笑い出して。

「・・・すみません。挙動不審なひなたさんが可愛くて、つい」

初めてキスした、あの日と同じことを言われて。
でも今の彼はあの時より余裕があって。
それが妙に悔しくて。

「恥ずかしくないんですか・・・?」
「何がです?」
「その・・・そういうこと、言うの・・・」

そう言うと透さんはキョトン、とした顔で私を見つめて。何か変な事でも言っただろうか。

「別にそうは思いませんよ。思っていることを言っているだけですから」

自信に満ち溢れた顔をしながらそう言われた。

天然、ではないと思うけど。これも計算のうちなのだろうか。無意識なのだとしたら、相当タチが悪い。
段々と悔しがるのも馬鹿馬鹿しく思えて。

「透さんの弱点ってないんですか・・・」

つい、心の声が漏れた。
別に知ってどうこうするつもりではないが、単純に彼の弱い部分を知りたくて。



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