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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第12章 迫る影




「念の為、暫くポアロの仕事は昼間だけにしましょう。いいですね?」
「・・・・・・・・・」

私の不注意で梓さんにも迷惑をかけてしまうことが嫌で、透さんからの提案は少し受け入れ難いものだった。

「・・・ひなたさん?」
「・・・今まで通りで大丈夫です。あのお客さんも、もう来ないと思いますし・・・」

それは私の精一杯の強がりでもあって。

数秒の沈黙の後、私のその返事を聞いて急に透さんが近寄ってきた。何も言わずに近付く彼を不思議に思い、落としていた視線を彼に向ける。
透さんは目の前で立ち止まると、突然私の手首を掴んだ。

その行動に、さっきの出来事がフラッシュバックして。
震えて、目眩もする。呼吸は段々と荒くなってきて。
相手は透さん。でも感じるのは恐怖だけで。

「こんな状態で、正常に家まで帰れるとは到底思えませんが」
「大丈夫です、から・・・離してください・・・!」

さっきのように声まで震えていて。掴む手を離そうとするが、透さんの手はビクともしない。相変わらず力は強い。
そして、さっきとは違う恐怖も感じてきて。

「それはできません。またあの男がこうしてきたら、どうするつもりですか」

手首を掴むその手に力を込められたのが分かった。痛い、という程ではないが恐怖は煽られるようで。

「・・・っ、離して・・・!」
「それでは離してくれないと思いますよ」

淡々と、どこか悲しそうに喋る透さんの声に胸が締め付けられるようで。

「やめて・・・っ、透さん・・・!」

全ての思いを込めて彼の名前を呼ぶ。
それでも握る手の力は緩めてくれなくて。

「・・・お願いです。これ以上、心配をかけないでください」

苦しそうな声。
その声で、恐怖とは違う感情が押し寄せてくる。

整わない呼吸のまま、ゆっくりと透さんに視線を向ける。真剣な眼差しなのに悲しそうな表情。
その表情に釣られるように、悲しさが移って。

「・・・とおるさ・・・」
「梓さんには相談済みです。だから・・・」

分かっている。
透さんの提案を飲んだ方が良いことは分かっている。
それでもせっかく見つけた私の居場所だから大切にしたくて。

でもその判断が透さんや梓さんを困らせるなら。

「・・・分かり・・・ました」

私の気持ちは押し殺すしかなかった。



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