第88章 感覚で※
「コナンくんの所に・・・着いてきてもらおうと思って・・・」
一体いつから見ていたのだろう。
信じてもらえるかどうかはさておき、これは嘘ではない。
後ろめたいことはないはずなのに、どこか罪悪感を感じるのは何故なのか。
「・・・そうか」
少しの間の後、彼は納得の言葉を一つ吐くと、ようやく車を発車させた。
そこから再び会話は無く。
ただひたすらにどこかへと車を走らされた。
その最中、流れる景色を見ては、自分にようやくいつもの冷静さが戻ってきたように思えて。
だからだろうか。
こんなにも彼が傍に居ることに安心するのは。
コナンくんからあんな事を聞いた直後は、不安で押し潰されそうで。
今すぐにでも安否を確認したかったのに。
あんな状況で出会ってしまったから、焦りの方が強く感じてしまった。
だから今ようやく、彼が無事だったという事実を、実感しているのかもしれない。
「・・・すまない」
「?」
窓の外に向けていた視線を彼に戻すと、何故か口にした謝罪の言葉の意味を問うように、首を傾げた。
「優しくは、できないかもしれない」
突然そんなことを言われれば、不安を感じない訳が無い。
何も返す言葉が見付からないまま、ただ視線を足元に落としては、小さく頷いて。
きっとこれから何処かで、ジョディさんやコナンくん、沖矢さんとの事をもう少し詳しく話を聞かれるのだろう。
きっとそれに対してなんだと思った。
特にまだ何も起きた訳ではないから、話せることは極僅かだけど。
ーーー
15分程経っただろうか。
車を止めた先は、見慣れない駐車場で。
「こっちだ」
車から降りると手を取り引かれ、すぐ隣のごく普通のマンションへと入っていった。
そのまま迷いなくエレベーターに乗り込むと、どこかの階のボタンを押して。
その中でも、会話は無い。
気まずいといえばそうだが、今の落ち着いた気持ちを保つ為にも、その方がありがたいとも思っていて。
エレベーターの扉が開き、廊下を奥へと進んで突き当たりの角部屋の扉の前に立つと、彼はポケットから取り出した鍵で、その部屋を開けてみせた。