第88章 感覚で※
「貴女も一緒だったんですね。FBI捜査官」
「・・・私はそこで偶然会っただけよ」
それも本当かどうかは分からない。
けど、そんな問題は些細な事にすら思えてくる。
相当なパニック状態の脳内は、思考回路というものを次々に壊していった。
「すまないが、彼女は連れて行っても構わないかい?」
ようやく動いた視線をコナンくんへ向けると、彼もまた私の方を見ていて。
アイコンタクトで謝ると、彼は強ばった表情から一変して笑顔をパッと作り上げた。
「僕、如月さんとお話できるの楽しみにしてたんだけどなー。でも、仕方ないね!」
楽しんできてね、と言葉を足したコナンくんに、再び目で謝罪して。
流石の演技力に脱帽しながら、再び彼に手を引かれかけた時。
「あー!安室さんだー!如月さんと手繋いでるー!」
少し後ろでそんな声が聞こえ、心臓が一度大きく跳ねた。
「二人でうな重でも食いに行くのかー?」
「ちょっと!元太くんじゃないんですから!」
神社へと向かったと思った少年探偵団のみんなが、いつの間にか背後に勢揃いしていて。
その瞬間、手を繋いでいた事実に気付き、急に恥ずかしさが込み上げてしまった。
「こ、これは・・・っ」
咄嗟に右手に絡む手を離そうとした時、掴む彼の手の力が再び強くなった。
「彼女、すぐに迷子になってしまうからね。それにこうしていると・・・」
「・・・!!」
言いながら彼は、握っている手を自身の口元へと近付けたかと思うと私の指へと優しく口付けを落として。
「ひなたさんが赤くなって可愛いんだ」
そんな事をされて、赤くならない理由があるものか。
彼の言葉通り、顔が熱くなり、赤くなってきたことを感じると、思わず彼らから視線を逸らした。
「ホントだー!如月さんの顔真っ赤!」
穴があったら入りたい。
子どもたちはともかく、コナンくんやジョディさんにこんな姿を見せてしまうのは、情けないやら恥ずかしいやらで。