第88章 感覚で※
体は引力通りの場所へ倒れると、何かへとぶつかった。
・・・というよりは、受け止められたというのが正しいか。
「大丈夫ですか」
「!」
これは、安易に一人になってしまった学習能力の無い自分を責めるべきだろうか。
声のした方へゆっくりと顔を向けるが、声で誰かは分かってしまっていて。
「・・・沖矢さん・・・」
この瞬間に思ったのは、今回もまたコナンくんと手を組んでいるのではないかということ。
でも、仮にそうだとして・・・今回ばかりはそうする理由が分からない。
「ボウヤのことを気にしているなら、今回は関係ありませんよ。僕が個人的に、貴女を見ていたに過ぎない」
・・・それでも、分からない。
何故、沖矢さんに個人的に見張られなければいけなかったのか。
一つ分かったのは、先程感じていた視線は沖矢さんによるものだったという事で。
「・・・ストーカーにでもなったんですか」
「それも良いかもしれませんね」
睨むように皮肉を言ってみるが、相変わらず綺麗に流されてしまって。
やはり彼のこういう所は、少しだけ苦手だ。
「神社に向かうなら、比較的人混みが少ない裏道を通ることをお勧めしますよ。舗装はされてませんが」
神社へ向かうなんて一言も言ってないのに。
私が博士の元へ向かうことを察していたのだろうか。
だとしたら、一体いつから私のことを見張っていたのだろう。
・・・そもそも、博士達と来ていることを知っている時点で、コナンくんが関係しているか、最初から見ていたかのどちらかではないか。
「ありがとうございました。では、そうさせて頂きます」
気持ちの込もらないお礼を言いつつ、受け止められていた体を突き放すように剥がしてみるが、彼の手は何故かまだ私の腕を掴んだままで。
「・・・離してください」
「神社まで、お供しますよ」
いつもの笑みを浮かべながら話す彼に、疑問しか残らなくて。
何か、あるのだろうか。
わざわざこんな所までついてきて。
いや、無ければついてくる理由が無い。
今、私はどうするのが正解なのだろう。