第88章 感覚で※
「博士にも、色々ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
「コナンくんに比べたら可愛いもんじゃよ」
そう言って笑う博士に、苦笑いしかできなかった。
・・・一体、普段からどんな厄介事を持ち込んで来ているのだろう。
コナンくんの事だから、普通の厄介事では無いだろうし。
「そういえば、安室くんは居ないのかの?」
「あ・・・はい、ちょっと探偵の方のお仕事があって」
本当は本庁に向かうと言っていたけど。
こんな所でそう言う訳にもいかないから。
一応誘ってはみたものの、案外二人の予定を合わせることは予想以上に容易ではなかった。
・・・今までが、一緒に居過ぎたのだろうか。
「ハァイ!クールキッド!」
少し足取りが重く感じてきた中、その重さを一気に軽くしてしまいそうな程の明るい声を背中で受け取って。
聞き覚えはあるけれど、久しぶりに聞くその声に引き寄せられるように振り返った。
「ジョディさん・・・!」
まさかこんな所で、と驚きながらその姿を確認して。
最後に会ったのはいつだっけ、と思い出していた時。
「久しぶりね、如月さん。ノックの事件以来かしら?」
そう私の名前を呼ぶ彼女に、どこか違和感を覚えた。
「丁度良かった、ジョディ先生に話したいことがあったんだ」
そう言ったコナンくんの言葉で、ようやく感じた違和感が何なのか、少しだけ分かった気がした。
普通、私がこの顔ぶれの中に混ざっているのはおかしい。
普段からコナンくんと交流があるジョディさんなら分かるはずだ。
でもジョディさんはそこに何も指摘をせず、普通に私へ挨拶をしてきた。
それは最初から、ここに私が居ることが分かっていたからじゃないだろうか。
そしてコナンくんも、一人でここに居るジョディさんに、誰と来ているのかとも聞かない。
彼もまた、ジョディさんが一人でここに来ることを知っていたからではないだろうか。
ここに来たのは・・・元々待ち合わせだった、から。
・・・なんていうのは、あらゆる探偵の隣に居過ぎたせいの、考え過ぎだろうか。