第88章 感覚で※
「一応聞くけど・・・その・・・」
「昴さん?大丈夫、居ないよ」
毎回その存在を確認せずには、零に話を出す事もできない。
いい加減、赤井さんも正体をバラしてほしいところではあるが・・・それができないということも分かってはいるから。
「如月さんってさ、昴さんのこと嫌いなの?」
「え?」
コナンくんの言葉に安堵したのも束の間、核心をつくような質問に、心臓をドキッと跳ねさせた。
「別に嫌いじゃないけど・・・透さんが嫌がるからね」
「・・・じゃあ、赤井さんのことは?」
どうしてそんなことを聞くのだろう。
高校生故の好奇心なのか、探偵故の探究心なのか。
「変わらないよ。・・・どうして?」
「ううん、何となく気になっただけ」
ああ、やはり探偵というのはズルい生き物だな。
人の情報は聞き出すけれど、自分の情報は漏らさない。
「じゃあ僕、約束あるから。お花見の返事待ってるね」
そう言って、こちらへ手を振りながら二階の探偵事務所に駆け上がって行く姿は、紛うことなき小学生だ。
それを目で見送れば、小さく溜息を吐いて。
彼とのお花見の予定も決まっていないのに、別の人との予定は決まってしまった。
ーーー
土曜日。
案の定、零にお花見のことを電話で話せば、コナンくんと一緒ならと、お花見に行く許可は貰えた。
そこまでは予想通りだったが、公安の人の護衛は無しでも構わないという所までは予想違いで。
場所は近くの神社でしている桜祭り。
コナンくんが言っていた通り、博士と、子ども達と、そして珍しく哀ちゃんの姿もあって。
満開の桜を見れば、やはり零と見たかったなと寂しさを感じてしまった。
「体の方は大丈夫かの?」
「はい、なんとか」
屋台が並ぶ光景に子ども達は興奮した様子で駆け巡り、次は何にしようかと目を輝やかせていた。
それを見つめながら博士と歩いては、奥に続く神社へと皆で向かった。
後ろではコナンくんと哀ちゃんが何やら会話をしているようだったが、そこに入っていける雰囲気ではとても無くて。
気にはなったものの、今はこの雰囲気を楽しむことだけを考えるようにした。