第88章 感覚で※
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「如月さん」
「コナンくん・・・!」
次の日、ポアロの外を掃除している中、突然声を掛けてきたのは彼だった。
「・・・大丈夫だった?」
彼に目線を合わせるようにしゃがみ込むと、突発的にあの日の事を問いかけた。
私が記憶を失った直後、阿笠邸で彼と話して以来、会ってはいなかったから。
・・・その別れ際には、零が突き放すような事も言っていた。
「こっちの台詞だよ。昴さんからは聞いてるけど、僕にも連絡入れてくれれば良いのに」
「ごめん・・・」
膨れっ面の彼に、中身は高校生なのに可愛いと思ってしまいながらも、笑顔を作りながら謝罪の言葉を口にして。
「記憶、戻ったんだね」
「・・・うん。コナンくん的には、戻らない方が良かったのかもしれないけど」
そんな事ないよ、と一応笑って見せる彼だったが、嘘をついてる時の私もこんな感じなのか、と察してしまった。
「あのさ、今度の土曜日何か予定ある?」
「土曜日・・・?」
というと三日後か。
「今のところは・・・ポアロもお休みだから、何も無い、と思うけど・・・」
多分その日は、零とお花見に。
・・・というのは私の勝手な予定だから。
「良ければ、一緒にお花見に行かない?博士や探偵団の皆も一緒だけど」
「・・・何かあるの?」
まさか彼の方からお花見の誘いがあるとは思わなかった。
ただ、軽井沢や水族館での出来事があったせいか、彼の誘いを受けると正直良い事にならない気がして。
それは私の運が悪いのか、それとも目の前の小さな彼が、何かを引き寄せているのか。
「・・・何も無いって言うと、嘘になるかも」
珍しく事前に告知する彼に驚きながらも、何も無ければ誘いはしないかと納得もした。
「だからできれば何も聞かず、着いてきてほしいな」
こういう時に子どもっぽさを出すのは大変ズルい。
でもそれが彼の武器だから。
母親譲りの演技力は伊達なものではない。
「一応、透さんに聞いてからね」
きっと、聞いたら行っても良いと言うだろう。
だから聞きたくはないけれど。
コナンくんの誘いを、断る事もしたくはなくて。