第88章 感覚で※
「・・・?」
何故か不思議そうに私の顔をジッと見つめる彼に小首を傾げると、彼の手が優しく私の頭を撫でて。
「もう少し、動揺するんじゃないかと思っていたんだ」
「!」
その言葉に動揺しない訳がなかった。
そうか、赤井さんから事前に聞いていなかったら・・・確かに動揺していたかもしれない。
少なくとも、赤井さんにぶつけた不安を零にもぶつけていたと思う。
・・・赤井さんの言葉に心底救われていることへ、悔しさに似たものも覚えてしまった。
「・・・何か意味があるんだろうとは、思ってたから」
当たり障りの無いことだけ。
でも嘘ではないから。
「もっと早くに伝えるべきだったんだが」
別に遅くても早くても、私は構わない。
彼から話してくれたんだという事実さえあれば。
・・・赤井さんのことは話すべきか迷ったが、彼からこの事を話してくれた以上、わざわざ言うべきではないかとも思えて。
でも、話すべきことはきちんと話さないといけない。
それが赤井さんの事でも。
必要性を感じた時は、なるべく早く話すことを心に決めて。
「何か異変があれば、これからも変わらずすぐに・・・」
そう彼が言葉を続ける中、何か彼に話すべきことがあったのではないかと、途端に不安に思って。
何かを、忘れているような気がして。
「・・・ひなた?」
相槌が無い事を疑問に思ったのか、私を見下ろすように彼が体を動かした。
それでも忘れているはずの何かを思い出すのに必死で、返事はできなくて。
「・・・・・・」
なんだろう、何を忘れているのだろう。
赤井さんの事では・・・無いと思うけれど。
・・・彼に、話すべき・・・こと。
確か、あれは・・・。
「・・・・・・あ・・・っ!」
不意に思い出した記憶で突き動かされるように、勢いよく彼の腕の中から体を飛び上がらせると、目を見開いて驚く彼に視線を向けた。