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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第87章 飲んで※




「そうだな」

小さく吐くような笑いを一つすると、彼は額に優しく口付けて。

「今はこれで我慢しておく」

彼の唇が触れた場所に手を伸ばすと、そこがどんどんと熱を持っていくようだった。

「また、戻る前に連絡する」
「・・・分かった」

静かに部屋を後にする彼の背中だけを見つめて。
更に静かになった玄関で、暫く立ち尽くした。

・・・零。
最後まで、その名前は呼べなかった。

途中からは、半ば意地のようなもので安室透の名も呼ばなかった。

彼は、私の名前を呼ぶのに。

ズルい。

なんて思うのは、おこがましいだろうか。


ーーー


「?」

タクシーで彼の家へと帰る最中、スマホが鳴っていることに気付いて。

手に取り画面を見れば、正直出たくはない電話番号が視界に入った。

・・・でもこの電話の主にも一言、言っておきたいことがあったから。

嫌々ながらも、電話を受けるとスマホを耳に当てた。

「・・・はい」
『今、どちらに?』

てっきり赤井秀一で掛けてきていると思ったけど。
念の為か、沖矢昴として電話は掛かってきた。

「今出ていて・・・もうすぐ米花町の辺りですけど」
『少し、こちらに来られませんか』

・・・なんだろう、急いでいるのだろうか?
何となく、声色からそんな気がした。

「電話では・・・」
『駄目だから、こうしてお呼びしているんです』

声や口調は沖矢昴だけど、何処となく赤井秀一が滲み出ている気もして。

それに威圧を感じて、自分を落ち着かせる為の小さなため息を吐いた。

「・・・公安の方の護衛がついているんです。連絡を入れるので、五分後に折り返します」
『分かりました』

一分程の短い電話は直ぐに切られ、私はすぐ後ろを走っている風見さんへと電話を掛けた。

阿笠博士の所へ用事を思い出した為、移動先をそこへ変える、と。

嘘をつくことに罪悪感は勿論あったけれど。
要らない心配も掛けたくなかったから。

ただどちらが正解なのか、今の私には正確に判断ができなかった。

沖矢さんとの話の内容によっては正直に零に伝えることを決め、タクシー運転手に行先の変更を告げた。



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