第87章 飲んで※
「ふ・・・っンぅ、あ・・・っ」
腰を浮かせては、また沈み込んで。
要らないことを忘れるように、ただ必死に動いた。
パシャパシャとお湯が波立つ度、悪い事をしている気分になる。
実際、そうなのかもしれないけど。
「・・・・・・っ、ひ、ぁ・・・」
そこに快楽があったのかは分からない。
このナカを埋める温かさは、彼の物なのか。
それとも私達を包んでいる、このお湯なのか。
それすらも、分からない。
でも、やけに甘い声だけは・・・勝手にどこからか溢れてくる。
「っあ・・・ぃ、・・・あぁ・・・っ」
足りない、こんなのじゃ。
でも、どうしたら良い。
この来るしさは、どうしたら無くなる。
快楽だけを感じるには、どうすれば。
「・・・っ、ひゃ・・・ッ」
私が腰を上げた瞬間、彼は何故かその身を引いて、私のナカから完全に抜いてしまって。
戸惑いと共に反応して声を上げると、そのつもりは無かったけれど同時に体をぐったりと彼に預けた。
想像以上に体に力が入らなくて。
息も、整わなくて。
「・・・ベッドに行くぞ」
そう言って彼は私を抱き抱え、頭がボーッとする中、簡単に体を拭かれた。
どうしてここじゃないのか。
そう聞きたい声は喉の奥でグッと飲み込んで。
気付けばベッドの上で、バスローブを体に掛けた状態で仰向けに転がされていた。
「・・・?」
私をベッドに運んだ後、彼はどこかへと向かってしまって。
それを目で追おうとしたが、体が怠くてできない。
ただただ天井を、静かに見つめていた時。
「!」
何の前触れも無く、目の間に彼の顔が現れて。
「体、起こせるか?」
言いながら、彼は私の首の後ろに手を回していて。
指一つ動かすのも億劫になっている体を引きずるように起こすと、自然とその補助をされた。
「ぬるめにはしたつもりだが、本当にのぼせたんじゃないのか」
そう言って差し出された水を受け取りながら、どこかその言葉に違和感を感じた。
・・・本当に、とは・・・どういうことだろう。