第87章 飲んで※
「ち、違っ・・・!いや・・・違わないんだけど・・・!」
何か言えばどんどんと怪しくなってしまう。
でも何も言わなくてもそれは肯定だ。
結局何を言っても言わなくても全て怪しくなってしまうことに、彼の質問の仕方がズルいと、心の中で責任転嫁までしてしまった。
「・・・相変わらずひなたは嘘が下手だな」
「・・・ッ!」
少し悲しげな笑顔に、胸がチクリと傷んだ。
「違うの・・・っ、本当に・・・」
「分かっている」
誤解だと心の中で言い訳をしながら、静かに瞼を閉じた彼の表情をジッと見つめていると、小さく口角が上がったように感じて。
「嘘が下手だということは、嘘をついていない時も分かりやすいということだ」
・・・やっぱり、ズルい。
最初から、何もかも分かっている上で、敢えて私に聞く。
「ひなた」
でもそれは、私が彼に墜ちてしまった時点で文句の言えないことだから。
「続きはどうする?」
ほら、また。
「・・・やめられないようにしたのは、透さんでしょ・・・」
「身に覚えがないな」
白々しい笑みを浮かべながらも、それに心臓を高鳴らせて。
やっぱりこの人が好きなのだと、役に立ちたいんだと、強く思ってしまった。
「・・・っ・・・」
正直、体は悲鳴を上げている。
案外寸止めというのは、精神的に強く来てしまうことを改めて感じて。
「・・・!」
タオル越しだった彼のモノが、いつの間にか蜜口に当てられている。
それに気付いた瞬間落ちていた視線を元に戻せば、いつもの優しい彼の表情の中に、僅かな余裕の無さが見えて。
「ひなたが降りてきてくれるだけ、なんだがな」
それは、状況からして分かっている。
自分から沈み込んで行くのは初めてでは無いけれど、どこか初めてのような感覚さえしてくる。
お湯の中で重力が軽くなっている分、自分から沈もうとしなければ中々沈まないことに、もどかしさと羞恥でどうにかなりそうだった。