第87章 飲んで※
「・・・・・・」
湯船の縁に座らされると、彼は一度シャワールームを出て直ぐに戻ってきた。
身につけていたズボンを脱ぎ、腰にタオルを巻いて。
「・・・っ!」
目の前に立たれたかと思うと、素早く後頭部に手を回され深く深く口付けされた。
突然の行動で思考が一瞬で停止し、どうする事もできなくなった。
「んン、ん・・・っ!」
そのまま後ろに滑らされるように、湯船へと体を落とされて。
少しぬるくなっているお湯は、わざとだろうか。
「・・・っ、ん・・・」
キスの最中、お湯の中に入ってしまえば体は簡単に彼の思うように動かされてしまう。
寄りかかりながら座る彼の上に、向かい合って跨がるように体を誘導されると、タオル越しに彼のモノが当たって。
「あの後、僕が止めなければどうするつもりだった?」
唇は離れているものの、すぐに触れ合えるような距離で、数分前の質問を重ねられた。
「どう・・・って・・・」
肩で息をしながら返答に迷っていると、彼の親指が徐ろに唇を撫でて。
その時、チャプンという水音が嫌という程室内に響き、それにどこか背徳感を感じた。
「何を、どうしようとしていた?」
体を引き寄せられながら、今度は耳元で低く囁くような声で再度問われて。
背筋に走る何かに体を僅かに痙攣させると、キツく瞼を閉じて彼の肩を掴む手に力を込めた。
「・・・く・・・口で・・・」
彼のモノを、含もうと思っていました。
・・・なんて、言える訳も無くて。
それは彼も分かっているのに。
きちんと証拠として話させようとするその行動に、いつも警察官なんだと思い知らされるようで。
「したことがあるのか?」
「な、無いよ・・・ッ!」
勢いよく、彼の肩に置いた手をそのままに腕を伸ばし、密着した体を離しながら顔を見れば、ほんの僅かに目を丸くした彼の表情が目に入った。
ここまで早く反応してしまうと、ある意味肯定しているようにも取れてしまうことには、もう少し早く気付きたかった。