第87章 飲んで※
「んんっ、んぅ・・・ッ!!」
太ももを撫でていた手は胸の膨らみへと移動し、指先で蕾を転がされながら、少し手荒に揉みしだかれた。
「そして」
一本でも十分に口内はいっぱいなのに。
もう一本指を増やされては、言葉を続けられた。
「無茶や無理も、許さない」
声のトーンは変わらず、低いまま。
その声が耳元で響けば、体がゾクゾクと震えるようで。
「・・・っふぁ、ン・・・」
無茶や、無理。
まるでこれから、そういうことが起こると言われているようで。
「んっ、く・・・ン・・・ッ」
最近幾度となく、こういう最中の時に何も喋らせようとしないのは何故だろう。
名前を呼ばせないことも理由の一つらしいが、それ以外は。
「・・・ッ・・・」
右肩にある銃創の裏側の辺り、背中の方からキスを落とされると、ドクンと心臓が一際強く跳ねた。
未だ気にしているんだと思うと同時に、忘れてくれれば良いのにとも思う。
でもこれは一生、私達の間に消えない傷となるのだろう。
見えるものとしても、そうでないものとしても。
「ひなた」
知らぬ間に息が上がり、とろけきった顔をしてしまっている中、それに気付かせるように顔の真横で背後から再び名前を呼んで。
「・・・ッひ、あぁあ・・・!?」
完全に気が逸れていた。
ゾクッという体が沈むような快楽と共に気付いた時には、腟内に彼の指を飲み込んでいた。
「ん、んぅっ・・・ふ・・・ッ」
目を背けるつもりも、瞑るつもりも無かった。
けれど、反射的に瞼は閉じられ、彼の腕を掴んでは動きを止めようと力を込めた。
「・・・っは、ぁ・・・あぁ・・・ッ」
糸を引きながら、口内から彼の指が何故か突然抜き取られて。
薄ら瞼を開くと、その隙間から鏡越しに彼の様子を伺った。
「あんな事、どこで覚えてきた」
「・・・?」
あんな、事とは。
ただでさえ思考は鈍っているのに。
彼はどうしていつも、こういう時に質問をしてくるのだろう。