第86章 刻んで※
「・・・っ、や・・・ン、ぅ・・・」
カメラが付けられているという事は、音声も向こうに抜けているに違いない。
今声を上げればジン達に聞かれる。
それが彼なりのお仕置なのかもしれない・・・けれど、できることなら今は声を上げたくない。
仰向けの体制のまま顔だけを背け、手の甲側で口を塞いで何とか押さえ込んだ。
「我慢せず、声を聞かせて頂けますか」
今度は耳元ではなく、普通に。
降谷零でも無く、バーボンで。
私を見下ろし、蔑むような目で。
例えそれが演技だとしても、怖くて長くは見ることができなかった。
軽く取り払われた自分の手を目で追った後、蕾を刺激している手とは別の方の手が、私の首筋をゆっくり指が這っていった。
「っあ、ゃ・・・っ」
その手袋を取ってほしい。
・・・なんて言うのはおこがましいだろうか。
少し怖いから。
いつもの貴方を感じたい。
その少し冷たい、貴方の手を・・・
「いつものように」
言葉を続けた彼の雰囲気はバーボンだったけれど。
今度はどことなく、降谷零の言葉にも聞こえて。
思わず背けていた視線を彼へと戻した。
「ん、・・・っふ、ンぅ・・・ッ」
目が合うや否や、今度は深く絡み合うキスをされて。
絡め取られる舌に何故か意識が朦朧とするようで。
「っあ、ン・・・んッ」
流れるように唇が頬へと移り、首筋へと触れると、ねっとりとした温かい舌が下から上へと這い上がってくる。
この部屋には二人しか居ないのに。
何故か二人きりではなくて。
思うように声も出せず、どことなく苦しい。
その苦しさがただの快楽のせいならば、どれ程良かっただろう。
「・・・ひぁ・・・っ!」
「おや、もう濡らしているのですか」
下着越し、そして手袋越しから秘部へと触れられて。
バーボンの愛人としているということは、こういう状況にだって柔軟に対応しなければならないのに。
怖いなんて思っては・・・いけないのに。