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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第86章 刻んで※




「零・・・!」
「一日、こうしていたかっただけだ」

突き放したところで自分の腕の長さしか距離は取れない。
それを詰めることなんて容易過ぎた。

「さ、先にシャワー・・・!」
「これから汗をかくのに、か?」

壁に追いやられた時、ふと視界に入ったのは彼の意地悪な笑みで。

私の反応を見て・・・楽しんでいる顔だ。

その顔が徐ろに近付いて。
触れる・・・と思い固く瞼を閉じて身構えた。

・・・でも、数秒経っても何も無く、静かに聞こえてきたのは彼のクスクスと笑う声だった。

「冗談だ」

そう言って体を起こし、私も同じように腕を引き上げられた。

「冗談に・・・なってない・・・」

拍子抜けして力無くそう吐けば、その瞬間に唇を奪われた。

「食事を用意するから、その間に入ってくると良い」

触れるだけのキスの後、笑顔は崩さないまま涼しい顔でキッチンの方へと向かって。

・・・私は彼の言葉やキス一つでこんなにも心乱れ、動揺するのに。

「・・・ズルい」

私ばかり、彼に溺れているなんて。


ーーー


「ひなた」
「・・・大丈夫だよ」

その日、彼はバーボンになる時の服に、私は黒いワンピースに身を包んで夜の街へと紛れていた。

終始小刻みな震えが止まらない私に、彼は何度も声を掛けてくれて。

「・・・すまない」
「もう謝らないで。本当に大丈夫だから」

そして、その度何度も謝罪の言葉を口にした。

バーボンでいる時の彼はなるべくそうとしか接してくれないが、今日だけは長時間、降谷零でいてくれた。

「今日は僕がついている。絶対に離れるな」
「・・・うん」

これから向かうのは、とある地下駐車場。

そこで一度、落ち合う事になっている。

・・・黒い悪魔で、組織の人間であるジンと。

「これ程早く来るとは思わなかったな・・・」

そう呟くように言った彼の言葉を理解するのは、もう少し先のことで。



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