第85章 覚えて※
「ん、ぅ・・・ふぁっ・・・」
彼の首に回していた腕は、いつの間にか解かれていて。
気付いた時には、口に含まされている彼の手を強く握り締めていた。
「・・・っン、・・・は、ぅ・・・」
「噛めば良い」
私がそれをしないようにしていたことを、彼は気付いていたようで。
ただ一言だけそれを告げると、彼は自身のモノを更に私のナカへと挿入を続けた。
「ンぅ、ふ・・・あぁ・・・ッ」
噛むつもりはなかったのに。
思わず、快楽に耐える為に彼の指へと軽く歯を立ててしまって。
「・・・ッ・・・」
駄目だ。
まだ、達したくはないのに。
焦らされたせいで。
「あっ、ン・・・ぅ、ぁああ・・・ッ!!」
ガクガクと体を震わせながら、果ててしまった。
まだ彼のモノも、入り切ってはいないのに。
「・・・・・・っ」
キツく締め上げてしまったせいか、彼も喉の奥で息を詰まらせて。
知らない内に溜まっていた涙が零れながら彼へと視線を向けると、彼からは一筋の汗がポタっと垂れた。
互いに余裕が無いことは分かっている。
けど、今は動いてほしくない。
「・・・ッ・・・!?」
達したばかりの体は過敏になり過ぎているから。
それなのに、一気に奥まで突き上げられて平気な訳が無くて。
「んぅん、ふぅ・・・ン・・・!!」
その上、間も開けず何度も突き上げられた。
ギリギリまで引き抜いては、強く奥まで抉られて。
その度、悲鳴のような高く甘い、くぐもった声を漏らした。
「噛んでいろ・・・っ」
彼の余裕の無い声が、余計に快楽を増幅させる。
本当は嫌なのに。
それでも自然と噛むように力が入って。
「んん、ぅ・・・ふぁ、ン・・・ッ!!」
あぁ、また。
また堕ちてしまう。
「・・・ひなた・・・っ」
彼の声が引き金となったように、次に強く突き上げられた瞬間、目の前が真っ暗になった。
背中の方から登ってくるような快楽に身を任せ、声を上げているのかも分からなくなって。
チカチカと光が飛び交う中、私の意識は闇の中へと消えていった。