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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第85章 覚えて※




「・・・!」

その瞬間、彼は私の方へと倒れ込むように抱きついてきて。
前触れの無い行動に驚きつつ、それを受け止めるように彼の背中へと手を回した。

「れ・・・」
「でも」

どうしたのかと尋ねる間も無く、彼は話を切り出して。

「危険なことは・・・もう本当にしないでくれ」

・・・声が。

「・・・・・・っ」

震えてる。

聞いた事の無い程に弱く、か細い、彼らしくない声。

思わず動揺して、目が泳いでしまう程。

「・・・分かった」

しているつもりはないけれど。

その震えがこちらにまで移るようで。
手を回した彼の背中側の服を、反射的に握った。

正直何が危険に繋がるかは分からない。

今回の情報屋のことだって、私は知らず知らずの内に巻き込まれていた。

・・・でもそれは、私が弱かったから。

立場も、力も、気持ちも。

今の私にできることは、それらを少しでも底上げしていくことだ。

「あ・・・」

そんな事を思っている最中、キャンドルの火は段々と灯す力を弱くしていって。

それに気付き抱き合う形だった互いの体を離しながらキャンドルへ目を向けた。

灯りが弱まったせいで、窓から僅かに差し込む月明かりの方が明るく見え、消えそうなそれにどこか寂しさのようなものを覚えた。

「ひなた」

さっきより暗闇に近付いたせいで表情ははっきりと確認できないものの、声で何となくそれは感じ取る事ができる。

そこに先程のような震えはないものの、切なさのようなものは伝わってきた。

「もう、待たなくて良いか」

そう言った彼の手が、私の手の上へと重ねられて。

切ない感情は伝わってくるのに、彼はそれを感じさせないように行動や声色で蓋をしてくる。

今日は弱さを見せたかと思えば、意地悪な面を見せたり。
それが妙に極端で。

私を揺さぶっているのか、それとも彼の感情が落ち着いていないのか。

どちらにせよ、今の彼が不安に近いものを感じているのは間違いがないと思う。

触れる彼の冷たい手が、小刻みに震えている理由がそれ以外に見つからなかったから。



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