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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第85章 覚えて※




「ま、待って・・・!」
「何を?」

さっきの悲しい目は演技だったのかと思う程に、いまは悪戯っ子の様な目をしていて。

「何を待てば良い?」
「・・・ッ・・・」

耳元で囁かれれば、体へ一気に熱が注がれた。

理由なんて無い。
思わず言葉が出てしまっただけで。

「・・・意地悪」
「知っていることだろ?」

そう、話す彼の口角が上がって。

・・・そっか、それを知っているという事が、彼は嬉しいのか。

たったそれだけの事だけど、私しか知らない彼を、きちんと思い出したということが。

「ひなたが嫌ならしないさ」
「・・・本当に、いじわる」

熱を一方的に注いでおいて、私が拒否なんてしないと分かっていて。

嫌な気持ちなんて一つも無いことを知っていて。

「で、電気だけは消して・・・」
「じゃあ、こういうのはどうだ」

そう言った彼は、ベッドから降りると押し入れの方へと向かい、そこから何かを取り出してきた。

「?」
「ポアロの常連さんから貰ったんだ」

振り返った彼の手にあったのは、可愛い鉄製のキャンドルホルダーで。

その中に既にセットしてあったキャンドルに火をつけると、申し出通り電気を消した。

ぼんやりと灯る明かりは温かく、隙間からから漏れる光が部屋に幻想的な模様を浮かび上がらせて。

思わず食い入るようにベッドの上から、それが置かれたテーブルへと身を乗り出した。

「綺麗・・・!」
「ひなたが好きだと思って」

口にはしないものの、彼は私の好みをちゃんと感じ取っている。

そういう所はやはり探偵らしい。

「・・・・・・」

思わず魅入ってしまう。

揺れる光がこんなにも癒しを与えるものだなんて思わなかった。

・・・そういえば、工藤邸でも一度こういう事があった。
あの時一緒に居たのは、沖矢さんだけれど。

「ひなた?」

いつもどこか重なってしまう記憶。
でもそれは大体、沖矢さんが最初で。

この上無くそれが、悔しい。




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