第84章 教えて※
腟内に、さっきまでとは全く違う質量の物が入ってくる。
痛みはある。
けどそれ以上に。
「んんっ、ン、ぅ・・・ッ!!」
気持ち良い。
そんな単純な感情だけが浮かび上がってくる。
そして感じていた痛みすら、その内に快楽へと変わっていく。
その感覚も、幾度となく感じてきたことを覚えている。
・・・忘れていたのが、嘘のように。
「・・・っはぁ、ッ、は・・・」
唇が離れた瞬間、そこから一気に空気を取り込んで。
本当に窒息するのでは、と思う程に息が止まっていたことを感じると、改めて余裕の無さを思い知った。
・・・そうならないやり方を、教えられたはずなんだけど。
「・・・ッ・・・」
唇が離れたせいで彼の艶めかしい表情が目に入れば、自然と体に力が入った。
その直後、彼の眉は顰められて。
「・・・ひなた」
「わざとじゃな・・・っ、い・・・ぁぁあ・・・!!」
ゆっくりと入ってくる彼のモノを、無意識に締め付けてしまった。
その行為に彼からの視線を受けると、首を振って不可抗力だと言い訳するが、言い終わる前にゆっくりだった挿入は一気に行われた。
名前を呼んだ声こそ怒っているように聞こえたが、本当はそんなつもりは無いことを分かっている。
・・・分かっている。
「・・・ン、・・・っあ・・・」
彼の事がそういう人だと理解している事に、安心する。
きちんと覚えているんだと。
思い出せているんだと。
・・・もう、忘れるものか。
「動くぞ・・・」
その夜の、彼からの言葉は名前を呼ぶ以外では、それが最後だった。
彼が突き上げてくる度、部屋には互いの体がぶつかり合う音と、結合部から愛液がグチュグチュと溢れ出る音、そして甘ったるい声と彼の吐息だけが響いた。
「っあ・・・零、ぃあ・・・ッ!!」
恐怖が完全に消えた訳では無いけれど。
体が覚えている彼だという感覚に救われていて。
彼に飲まれて、溺れて。
「ン、っや・・・あぁぁぁ・・・ッ!!!」
彼と同時に、快楽の沼へと堕ちていった。