第84章 教えて※
指が動く度にクチュクチュと音を立て、全身が小刻みにガクガクと震えた。
「っ、んぅ・・・ふ・・・」
記憶はあるものの、どこか彼とこういう事をするのが初めての様な感覚も不思議とあって。
そのせいか、声が漏れるのに羞恥を感じる。
半ば無意識に手の甲を唇に押し当て声を我慢してみるが、どうしても抑え切れないものは漏れてしまって。
「我慢すると辛くなるぞ」
「だっ・・・て・・・」
決して口を抑える手を引き剥がしたりはしない。
それは彼なりの優しさなのか、はたまた意地悪なのか。
「・・・ふ、ぅ・・・んぁあ・・・っ!」
そしてそれは、直ぐに意味を成さないということを思い知った。
彼の指が腟内に侵入してくれば、呆気なく声は部屋に響いて。
更にゾクゾクとした快楽に、一瞬意識が飛ぶような感覚を覚えながら、彼の肩に爪を立てた。
「れ・・・っ、まだ・・・っ」
今、ナカで彼の指が動けばどうなるか。
その先を予想するのは、あまりにも簡単で。
「ッ・・・!!」
達してしまう。
そう思った直後、また恐怖に包まれるような感覚に陥った。
あの日、何度もあの男の前で達した、その時の嫌悪感と共に。
それも、あんな。
「れ、ぃ・・・っ、ぁあ・・・!!」
無機質な玩具で。
何度も何度も何度も。
こうして、本当に壊されるまで。
『・・・子猫ちゃん』
そう私を呼ぶ男の声まで聞こえてくるようで。
知らず知らずの内に眉間に皺を寄せ、悔しさのせいで僅かに涙が滲んだ。
「ひなた」
幻覚から戻ってくるかのように瞼を開けると、腟内に伸びている手とは反対の彼の手が、私の頬へと添えられていて。
「ひなた・・・」
そっと耳元に彼の口が近付くと、そう何度も名前を囁かれた。
ここにいるのは自分なんだと自覚させるように。
「ぃ、零・・・ッ」
そしてそれを自覚するように、彼の名前を何度も吐き続けた。