第84章 教えて※
「・・・余裕の無い時にそういうのは、よしてくれないか」
戸惑い、羞恥、動揺・・・彼の表情から色々読み取れたが、そんな思考は一瞬で吹き飛んでしまった。
「れ・・・っ、ん・・・!」
彼の顔が近付いたと思うと、それは耳元へと移動して。
温かく、甘い吐息が耳を擽ると、体は自然と反応を示した。
「怖くなったら言ってくれ」
そう耳元で囁く声にも感じてしまう。
・・・怖いはずなんてない。
だって、今私に触れているのは零だから。
「あと、体がおかしくなったらすぐに・・・」
「零・・・心配し過ぎ・・・」
そういえば彼は心配性だった。
それに、思いの外すぐに嫉妬もする。
「すぐに言うから。大丈夫だから」
そして、今私に触れる手は。
「この冷たい手が、零のものだって分かってるから」
だから、怖くなんてない。
「・・・分かった」
それでも心配そうな表情の彼に、彼らしさを感じた。
でもそれも、互いの唇が再度触れ合うまでのこと。
「ふ・・・っんぅ、ん・・・ッ」
再び舌が絡み合えば、理性なんてものは吹き飛んだ。
ただひたすらに、肺へ空気を送り込むことだけを考えて。
「んんっ、ぅ・・・ん!」
彼の手が、服の上から胸の膨らみに触れただけ。
それなのに、体は異常な程に反応してしまった。
優しい手付きで蕾の辺りを軽く刺激されるが、それが酷くもどかしい。
体はもっと強いものを・・・求めている。
「っ、れ・・・ぃ・・・」
足りない、こんなのじゃ。
もっと貴方を、教えてほしい。
もう一度貴方を、私に刻み付けてほしい。
今度は忘れることができないくらいに、強く。
「掴まって」
一度彼の手が離れ、背中へと回って。
耳元でそう囁かれたのを聞いて指示通りに動くと、彼は軽々と私を抱き上げた。
連れて行かれる場所は分かっている。
いつもそうだったから。
零の家とは違うベッドの沈み方が記憶と一致すると、体の熱は一気に上がり始めた。