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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第83章 戻ると




『彼が大切な存在だということを、僕は嫌という程、傍で見てきたのですから』

・・・沖矢さんの、傍で。

「・・・・・・」

そうだ、話をした。

何度も。

話を、した。

彼の・・・。

降谷零の、話を。

『これ以上こちらからの手助けはできませんが、貴女なら大丈夫です』

・・・手助け、と言えるのかは怪しいけれど。

でも、少なくとも彼の思いは伝わってきて。

「ありがとう・・・ございます・・・」

何故か感謝の言葉を口にしていた。

『まだお礼を言うのは早いですよ。彼をきちんと、取り戻してください』

そんなこと、沖矢さんに言われるなんて思いもしなかった。

どちらかと言えば、自分のテリトリーへと引き込むような人だから。
例外も勿論あるけれど。

『思い出した暁には、しっかり協力者として動いて頂きますので』

・・・いや、いつも通りの彼だ。
少し落胆しつつも、安心しているのは・・・何だろう。

そして、その協力者というのは・・・。

『では、それを投げて頂けますか』
「・・・投げる?」

突然そんなことを言い出され、彼の言うそれを探してみるが、それらしいものに見当は無くて。

『貴女の手にある、それですよ』
「・・・探偵団バッジですか?」

改めてそれを持ち直し、月明かりに照らされたバッジを視界に入れた。

『それを回収しに来ましたので』

確かに、いつまでもこれをここに置いておくのは危険だけれど。

そもそも、どうやってここにバッジを置いたのかも気になるところだが・・・追求しても意味の無いことな上、どうせはぐらかされるのだから。

「分かりました。・・・いきますよ」

そう言って、投げる構えをとって。

なるべく彼の近くへ飛ぶようにと、手から離れた瞬間だった。


『・・・俺なら良かったんだがな』


微かに、そう聞こえた気がした。

それは、沖矢昴の声ではなくて。

彼の・・・本来の姿の声で。

「・・・赤井さん?」

彼は飛んできたバッジを受け取ると、静かに暗闇へと姿を消してしまった。

その言葉が彼のものだったのか、もしそうであれば、その意味を聞くことができないまま。



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