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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第83章 戻ると




「それは・・・」

そう彼が何かを言いかけて。

でも、それ以上言葉は出てこなくて。

「・・・?」

戸惑いながら小首を傾げてみるが、彼は何も言わないまま、私の頬を掴んでいた手をゆっくり引いた。

「・・・すまない、何でもない」

冷静・・・ではない。
それを装っている。

何か言ってはいけない事を、言ってしまっただろうか。

「う・・・うん」

ただ小さく、そう返す他なくて。

向けられた彼の背中から感じる、この寂しさのようなものは何なのだろうか。

そして彼の頬にあった、あの跡。

あれは・・・多分・・・。

「・・・四日間、待った」
「え・・・?」

誤魔化すようにしていたのだろうが、彼の背中越しでもその動作は何をしているのか分かった。

・・・頬を拭っているのだと。

その瞬間、やはりあれは涙の跡だったのだと・・・察した。

「ひなたが目覚めるまで、だ」

・・・四日間、か。
そんなに長い間眠っていたなんて。

それも副作用の影響だろうか。

「・・・・・・」

そういえば。

前にも同じような会話をした気がする。
でもそれは、彼とではなかったような気もする。

・・・確かあれは。

「ひなた?」
「・・・ご、ごめんなさい。ちょっと寝起きで、ぼーっとしてるみたい・・・」

そうだ・・・ジョディさんとだ。

でもどうしてあの時は、四日間も眠っていたんだろう。
何か大怪我を・・・したような。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」

・・・駄目だ。
今は集中できなくて思い出せない。

それとも、別の理由で思い出せないのだろうか。

「何かあれば、すぐ僕に言ってくれ」
「・・・ありがとう」

その何かは、既に起きているのだろうけど。
それを彼に言うことは無いだろう。

少なくとも、私の口からは。





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