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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第82章 消える※




「・・・え・・・」

そこにいたのは、できればこの人を忘れてしまえれば良かったのに、と思う人で。

その人物は人差し指を二度手前に軽く倒すと、外に出てくるように私へ指示した。

彼には車で待っているように言われたが、目の前の人物が何故ここにいるのかも気になり、指示通り静かに車を降りた。

「・・・どうしてここに?」
「おや、僕のことは覚えてくれているんですね」

忘れてしまえれば良かった。

目の前この人を・・・沖矢昴を。

どうして忘れてしまったのは零だったんだろう。

「沖矢さんを、忘れてしまえれば良かったんですけど・・・ね・・・・・・」

そこまで言って、ようやく違和感を感じた。

「どうして・・・沖矢さんが、その事を・・・」

私が彼のことを思い出せないのは、一切口に出していない。

本人にバレている可能性はあっても・・・会ってすらいない沖矢さんにバレるなんてことは・・・。

「その話は後で。とりあえず僕の車に乗ってください」

そう言って彼は私の背中に手を回し、どこかへと誘導しようとした。

「ま、待ってください・・・っ、零がまだ・・・」
「彼に見つかりたくないから、こうして機会を伺ったんです。今は何も言わず、着いて来て頂けますか」

抵抗はしてみたものの、肩を持って押す沖矢さんの力には当然敵わず、どこか威圧的な声に力も抜けてしまって。

・・・それ以上に何故か、私は彼の・・・零の傍に居てはいけないとも思ってしまって。

半ば自分の意思で沖矢さんについて行くように、足を進めてしまった。

「・・・ッ・・・」

それでも、彼の・・・零の傍に居たいと思う気持ちが、無いわけではなくて。

何度も彼の車を振り返りながら視界に入れた。

「こちらです」

そう言って連れて行かれた先にあったのは、いつもの沖矢さんの車があった。

・・・沖矢さんのことは、こんなことまで覚えているのに。

奥歯をグッと噛み締め、悔しさを堪えながら沖矢さんの車へと吸い込まれるように乗り込んだ。



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