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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第82章 消える※




次に目が覚めた時、そこは病院ではなかった。

見知らぬ部屋。
でも、どこか懐かしいようにも感じて。

掛けられている布団から感じる匂いも。
ここから見える天井の雰囲気も。

そして。

「目が覚めたか?」
「!」

私の顔を覗き込む、名前しか思い出すことができない・・・彼も。

「体はどうだ?一応中和薬は投与したが、気分が悪くなったら言ってくれ」

そう言いながら、優しく頭を撫でられて。
その少し冷たい手が額に触れた時の感覚に、覚えを感じた。

以前にもこういうことがあった、と。

「れ・・・零・・・?」
「どうした?」

その優しい表情に胸が締め付けられた。

何故彼の事だけ思い出せないのか。
きっと一番忘れてはいけない人なのに。

彼はこの事に・・・気付いているんだろうか。

「・・・キス、して」

そうすれば思い出せそうな気がしたから。

私達がそういう事をしていたのかは分からない。
けど、気を失う前にあんな事を平気で行ったことを考えれば、無いとは思えなくて。

真っ直ぐ彼の目を見つめて、要求した。

「・・・先に食事を済ませてからな」

でも、それは緩やかに断られた。

ただ彼の返答から、私達がそういう関係性だったということは確信を得て。

そして彼は、ベッドから離れて隣の部屋へと消えてしまった。

それがどうしようも無く悲しく虚しく感じたのは、気の所為では・・・ないはず。

ーーー

思いの他、体は自由に動いた。
食事を取るくらいは容易にできて。

体の疼きも、熱も、嘘のように落ち着いている。

これが中和薬の効果なんだろうか。
もしそれが無かったら・・・私はずっと狂ったままだったんだろうか。

でも彼が思い出せないのなら、いっそその方が良かったとさえ思ってしまう。

「少し、出掛けないか」

食べ終えた食器を片付けた彼が、突然そう切り出して。

まだ色んな面で不安は残っている。
でも彼と過ごせば、何か思い出せるかもしれない。

僅かでもその可能性があるのなら、どんなものにでも、その方法に縋ってみたいと思った。





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