第2章 スタンバイ・シュガー/相澤
汗を流してリビングに出ればそこには久しく会っていない恋人──名前がいた。
「う、うわあああ!消太……!?」
「何そんなに驚いてんだよ」
俺の家に俺がいて何をそんなに驚くんだ。どちらかと言えば風呂に入る前はいなかったはずの名前がいることに驚くのはこちらの方だ。
「いや、だって、あの、服をお召しになって……?」
「なんだ、照れてんのか」
何度も見てるくせに、そう続ければ顔を真っ赤にさせて唇をわなわなと震わせている。動揺しすぎて妙な敬語使ってるとこも、未だに俺の裸──さすがに下着は身に付けているが─を見れば真っ赤になって照れるところも、可愛い。これで俺と同い年とか嘘だろ。
「名前がもっと恥ずかしくなるようなこと、する?」
そう問えば、少しだけ潤んだ目で俺を見上げて。薄く色付く唇を少しだけ開いて可愛く言うのだ。
「……する」
なんの連絡も無しに突然来るなんて、余程の理由があるのかもしれないが今はもうそんなことを気にかける余裕なんてなかった。
抱き上げてベッドに下ろせば煽情的に俺を見るその瞳も、照れながら控えめに誘うその言葉も、普段の姿からは想像出来ないこの行為の時だけ見え隠れする妖艶さも。ただただ俺を煽る要因でしかないのだ。
俺の恋人は、今日も可愛い。