第13章 錆びつく夜に
胸元に痕を残して満足気に笑った上鳴が私から離れる。
「なに、すんのよ……!」
「それ、相澤先生が見たらどう思うのかなって」
「こんなの……なんとも思うわけないじゃない」
軽い女だと思われる、そんなオチしか見えない。今でさえそう思われてても仕方ないのに、どうしてくれるんだ。
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どこかすっきりした面持ちで酒を煽る上鳴につられて私も珍しく酔ったな、と自覚するほど飲んだ。上鳴につけられた鬱血痕を思い出してイライラしては酒を煽ったというのもあるが、それにしたって今日は飲みすぎてしまったと自覚するくらいには。
「いやー、酔っ払ったわー」
「私もですよ上鳴さん」
「帰るかー」
「うーん、そうだねー」
---シヴィーぜ消太ァァァ!
個室を出るとほぼ同時に耳に入る大きな声。聞き覚えのある独特なその声に上鳴と顔を見合わせた。
「今のって……」
「マイク先生、だよな」
どこからか聞こえた声はどこからどう聞いてもマイク先生の声。そして呼んだ人の名は相澤先生の名前。
「二人で飲んでんのかな」
「そうかもねえ、あ、今日は私が払うよ」
「え?いやいや、こういうのは男が払うもんだろ」
「この間も出してくれたでしょ!今日は私が誘ったんだし」
上鳴の手から伝票を奪って会計へと向かう、その後ろから先程よりも近い距離でマイク先生の声が聞こえた。
「お?そこにいるのは水分と……上鳴か?」
「マイク先生、お久しぶりっす」
マイク先生に引き摺られるようにして同じくこちらに向かってくる相澤先生が視界に私たちを捉える。
「……よ」
「相澤先生も!お久しぶりっす!」
「ああ、久しぶり」
ちらりと私を伺いみた先生の目が私と上鳴を見比べる。
「お二人で飲まれてたんですか?」
「Oh Yeah!お前らもか?」
「まあ……そうっすね」
「へえぇー……まさかお前ら付き合ってんの!?てことは水分のkissmarkはお前が……!?」
ビシッと効果音が聞こえそうな勢いで指差すマイク先生に溜め息が漏れる。
「まさか」
「いやあ、俺は好きなんですけどね、そんなもん付けれる関係なら嬉しいんですけど」
「はああああ?」
「Fooooo!!!」
いいねぇ青いねぇ!なんて言うマイク先生を横目に、相澤先生が口を開く。