第9章 過ぎた熱をなぞる(裏)
膝立ちになってぐりぐりと奥へと指を進める。先生が着ていたシャツが目に入って、それを掻き抱いて、大好きな先生の匂いを吸い込めばそれだけでキュンと締まるナカを擦り上げて。
「あ、あああ、せんせ、っ……イきそ、はっああ……先生、好き、せん、せいっ」
「っ、水分……?」
もう、ほんの少し、あと少しだけで達するその直前に私と先生を隔てていたはずの扉が開いて。
見られた……!
「っぁああ、!」
そう認識した瞬間に奥がギュッと締まって軽く達してしまった。見られて、興奮したんだ。
「足りなかった、か?」
ふるふると首を横に振るが、この状態でそんなことしたって無駄だよなあ、と思っていれば腕を掴まれて立ち上がらされ、壁に追いやられて先生の指が陰核を擦る。
「ひっ、あ!」
「こんなにして、説得力ねえぞ」
胸の頂に唇を落として、無数のキスを降らせながら降下していく唇。太腿まで下がったその唇からぬるりと舌が現れて舐め上げられる。
「んん、っふ、ぁ、ああ!」
そのまま舌先で陰核を舐められてビリビリと快感が走る。とろり、と蜜が溢れるのがわかった。
蜜が溢れたそこに無遠慮に先生の指が侵入する。自分では届かなかったイイところに容易く届くその指に勝手に腰が動いて快楽を求める。ぐちぐちと音を立てて蹂躙する指と陰核を刺激する舌に、一度昇り詰めた体は呆気なく絶頂を迎えた。
崩れ落ちるように座り込んだ私の目の前には手の甲で口元を拭う先生がいて。
その愛液で濡れて光る口元に目が奪われて引き寄せられるように近付く唇は、先生の手によって阻まれる。
「水分、駄目だ」
「っじゃあ、なんで……」
どうして、私を抱くんですか、喉元まで出かかったその言葉を飲み込んで零れそうになる涙を零すもんかと堪えて。聞いてしまえばこの関係はきっと破綻する。わかりきっていることだとしても、愛など存在しないのだと、言葉にされてしまえば私の心は砕け散る。今はまだ、その現実から目を逸らしてこの関係に溺れていたい。
「帰り、ます」
口を塞ぐ手を軽く押して、小さく呟く。送ると言う先生を断って1人で帰路についた。今はこれ以上一緒にいたら涙を隠すことも出来ない。
どうか、どうか今日のことも忘れていてと。体を重ねたことを忘れられて悲しかったはずなのに強く思った。