第5章 デイジーは笑わない
目的の店は所謂歓楽街から少し外れた小路にある。そこへ行くには通らねばならない、この所狭しとネオンが煌めく通りにはいかがわしいお店も立ち並んでいて女一人で夜に歩くには少し抵抗があった。かと言って男女二人で歩くのもなあ、とは思うのだけれど。隣を歩く相澤先生の様子を覗き見るとなんとも言えない表情を浮かべていて、申し訳なさが込み上げる。
ようやく目的のお店がある小路に辿り着いて大きな通りを外れる。
「あ、あそこです」
指差したのは小さな居酒屋。駄菓子居酒屋なるところだ。以前、昼間にパトロールしている時に見つけてずっと気になっていたお店。夜のあの通りを一人で歩く勇気もなく来られなかったこの店にようやく足を運ぶことが出来た。
「どこに連れていかれるのかと思ったよ」
そう嘆息して肩を竦める先生。
「こんなところにあるものだから中々一人では来られなくて」
「まあ、そうだろうな」
眩しいネオンが煌めく通りに目を向けて納得したように頷いた先生がこちらを向いた。
「それじゃ、打ち上げといくか」
はーい、返事ははい、なんて言い合いながら暖簾をくぐった。