第35章 突き刺さった棘は抜けない
人のいる所でできる話ではない、そう端的に告げれば「俺の家でもいいか」と言われて今に至る。
学生時代の寮と似たような装飾がされた賑やかな部屋。上鳴らしいな、と自然と笑みがこぼれた。
「……んで、今まで何も言ってこなかったわけだけど。急に連絡してきたってことは何かあったんだろ?」
「、まあね……」
あの偶然出くわしたデート──と称して良いのかわからないくらいのものだったが─の日からのことを端的に話せば、途中で相槌を打ちながら話し続けて止まらない私の話を聞いてくれた。
話したところで上鳴にもどうしようもないことだってわかっているのに、言葉を吐き出す唇は止まらなかった。それでも上鳴は困ったような顔で私の頬を伝う涙を優しく拭って、そっと私を抱き締めて。安心する温もりをただただ与えてくれた。なんて狡くて、残酷な女だろうかと自己嫌悪する私に上鳴はまた「それでいいんだ」と悲しく笑った。