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【ヒロアカ】許してね、ヒヤシンス【R18】

第3章 消えて泡沫




「その、……なんでお前が家にいたのか覚えてないんだ」

 目の前が真っ白になるってこういうことなんだ、なんて酷く冷静に思った。

 先生は、なにも、覚えてない。覚えていないんだ。それならきっと、無かったことにした方がお互いのためだ。身体からスッと血の気が引いて末端から冷えていくのがわかる。乾いて上手く動かない口から、やっとの思いで言葉を吐き出した。

「先生の家で、飲み直そうって、」

 それだけです、気付いたら寝てて、すみません。そう言うのが精一杯だった。これ以上喋ったら、きっと私は泣き出してしまう。

 せめて体だけでも。そう思ったのは本当だったし、それで良かったけれど。それを先生が覚えていないなんて。叶わなくても、先生に私の存在を刻みたかった、それすらも。

「そうか、よかった。悪いな」

 そう言って歩き出す先生を呆然と見やることしか出来なくて。

 よかった、って何が?間違いがなかったと、思っているから?元教え子と何かがあったわけじゃなくてよかったってこと?好きでもない女を抱いていなくてよかったってこと?

「……全然、優しくなんかないや」
 
 生徒達にそう諭したつい先程のことが、馬鹿みたいに思えてきて。



……惨めだなぁ、




 そう呟いた声は広い校舎に吸い込まれて消えた。



 
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