第30章 零れ落ちるシャングリラ(裏)
喋らないで、と言われたら逆にそうしたくなるのが人間の心理ってもんだろう、そう思いながら口に含んだままに「なんで?」と声にすればいじらしく艶っぽい声が降りてきて耳を冒した。
「わかってる、くせに……っ、いじ、わるぅ……ん」
そっちこそわかっていてやっているのではないかと言いたくなるような甘い声が腰に響く。
「水分が可愛いからね、つい」
「っな!なに、言って……、」
ずっと胸につかえていた何かが取れた今、自然と口から零れだした言葉に赤面する水分。そんなん男を煽るだけだ。胸から口を離してずり下げただけのブラを外そうと背中へ手を回しホックを外す。半端に残った肩紐を少しずつ身体から離していく俺の動きに照れ臭そうに顔を背ける姿に零れる笑み。可愛い。可愛らしい下着を身につけて、それを脱がされるのを恥ずかしがる様は本当に、可愛くてたまらない。砂糖でも飲んだみたいに甘ったるい考えしか浮かばない自分を自嘲しながら、脱がせた服の散らばる様を見て。そういえば、ちゃんと言っていないじゃないか。
「下着姿もそそるけど……、今日の服も」
「?」
「水分に似合ってたよ」
脱がせてから言うことでもないな、なんて苦笑気味に呟きながら微笑んでまた胸元に唇を寄せた。服や悩まし気な声だけじゃない、水分の全てが可愛いとはさすがに羞恥心が邪魔をして言えないが、言葉にしなくたって伝わるほどに愛してやるから。