第25章 静謐に終わりは近付く

　もう数ヶ月経ってほとぼりも冷めた。本当はそろそろ潮時ではないかと思いながらも校内では周りに違和感を持たれない程度に恋人らしく振舞っていた。俺から切り出す気など微塵もなくて、水分からこの偽装恋愛の終わりを切り出さされるのを待っている。

　そんな状態でデートなど。
　
　けれど、進展も後退もしない停頓し続けるこの関係をこのまま引き摺っているのは、俺はいいとしてもまだ若い水分のためにはならないと分かっていて。

　水分はきっと自分から言い出した手前、後に引けなくなっているのだと思う。昔からそういうやつだ。真面目で、礼儀正しい優等生だった。

　俺は一つ、賭けに出ることにした。

　水分をデートなんぞ言うものに誘って、それに水分が乗ればこの関係を嘘から誠に進展させる勇気を出すと。もし断られたら、そこでこの偽装恋愛も俺のこの恋心──酔ったフリまでして水分を抱くのも、全て終わりにしようと。

　結局、なんだかんだと変な言い訳を自分にして水分に振られるのが怖いだけだ。もう水分の気持ちが俺にないかもしれないとか上鳴と付き合っているんだろうとか思う臆病な自分を捨てて素直になるべきだろう。俺が水分を思う気持ちをまともに伝えようともしないで逃げるのは終いだ。

　なによりもこんなふうに過ごしているこの時が合理性に欠ける。どこまでも合理性を求めていた俺がここまで翻弄される、つくづく恋などというものは合理的じゃないと思いながら。
　
　上鳴との関係を未だに疑いながら水分を手に入れようともがいている。水分の気持ちがどこにあるのか、はっきりさせようじゃないか。