第25章 静謐に終わりは近付く
マスコミへの対応、沸き立つ生徒達を否してこなす授業、うるさく聞いてくるマイク。それらを全てこなして寮へ戻ろうとする頃には既に辺りは暗くなっていた。
寮へと足を進めながら、マイクに言われた言葉を思い出す。
「まさかイレイザーが元とはいえ教え子に手を出すとはな」
正直言って俺も同じ気持ちだよ。いくらなんでも自分の半分程度しか生きていない女相手に本気になるなんてどうかしてる。
上手く言いくるめてこんな形で周りに牽制して、酔ったフリまでしてその体だけでも手に入れようと足掻く自身に嘲笑する。その上、熱に浮かされて好きだと口走ってしまうなど。
重たい扉を開けて寮に入れば疲れを纏った水分の背中が見えて。
「……水分」
「相澤先生、お疲れ様です……色々と」
掛けられる労いの言葉にお前もな、と返してその頭を撫でる。このまま腕の中に収めてしまいたい、その気持ちは胸に押し込めて。
頬を少し赤く染めた水分がこちらを見上げていて、押し込めた気持ちが溢れそうになるのを堪える。そんな顔されたら期待したくもなっちまうだろ。頬を染めたまま俺を見ている水分に「どうした?」と問えばなんでもないと言う途中で彼女のスマホが着信を知らせる。
───ヴヴヴ……
「すみません、電話が」
すまなそうにこちらを見る水分に出ていいよ、と目でスマホを見やればもう一度すみませんと返して。部屋に戻るか、と進めた足は耳に入る水分の声に止まる。