第24章 霧散する愛の言葉
先生、生徒、マスコミからの質問攻めに疲れ果てて寮に戻る頃にはすっかり日は沈んでいた。
マスコミはほぼ相澤先生に任せていたからいいとして、生徒達がもう、それはもう本当に凄かった。あのパワーはなんなんだろう。若さか、若さだ。授業にならなくて相澤先生が本気で怒っているのにそれにすら沸き立つ教室。恐ろしい。
先生達は声を大にして聞いてくる訳では無いがこちらを見る視線が生暖かいのがどうも居心地が悪かった。マイク先生だけはすごくうるさく相澤先生に話しかけ続けていたけれど。なんなら私のところにもきたけれど。「イレイザーのどこが!?」とか「いつから!?」とかなかなかしつこく聞かれたけれど、その度に相澤先生が捕縛布で締め上げてくれて助かった。
そんな今日一日を思い返しながら、とぼとぼと教師寮に入るとすぐ後ろから掛けられた声。
「……水分」
「相澤先生、お疲れ様です……色々と」
「ああ、水分もね」
ぽんぽんと私の頭に手を下ろして撫でるその手に昨夜を思い出して紅潮する顔。先生は覚えていないであろう昨夜は、妙に甘ったるかった。したかったからと言って私へ口付けるそれはまるで本当に恋人なのかと錯覚するくらいに。欲を放つその瞬間に先生の口から出た言葉の真意はなんだったのかなんて、聞けもしない。熱に浮かされただけの、ただの戯言だと分かっていても浮かれる心を鎮めて。