第16章 渦巻く黒い感情
雷「三郎、そのへんにしとけよ。」
鉢「別にいいけど…ここまで頭悪いとさぁ、くノ一向いてないよ。もう足洗ったら?」
呆れたように言う三郎に、ゆうきは何か言い返す気力もなく、
「お邪魔しました…」
力なくそれだけ言って、2人の部屋を後にした。
学園が休みの日は、ランチを食べに来る人もまばらなため、おばちゃんに1人で大丈夫と言われていた。しかし、やることがなく苦痛に感じたゆうきは、再び食堂の手伝いに赴き、午後は無心で学園の掃除を行なったのであった。
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雷「せっかく部屋まで饅頭持って来てくれたのに、三郎言い過ぎだよ…」
雷蔵は饅頭の乗っていた包紙を塵箱に捨て、友人の前に座り直した。
鉢「雷蔵、本当はどう思った?」
雷「土井先生と何かあったのは事実だと思う…。けど彼女の意図しないことだったんじゃないかな。本当にくノ一なら、何かあったのか聞かれても顔色変えずに否定するもんだろ。あんなに分かりやすく動揺して頬を染めるはずないと思うんだけど。」
鉢「一流のくノ一ならな。でもあいつは出来損ないの忍者である可能性はあるだろ。」
雷「そりゃそうだけど…。でも土井先生が本当に彼女を信用してる演技をされたのだとしたら、先生の手の内明かすようなことしてよかったのかい?」
鉢「いいんだよ、得体の知れない危険分子はそうでも言って、早く追い出した方がいいからな。」
雷蔵は同室の友人の意見に納得しつつ、そうならないで欲しいと思った。
鉢「それにしても雷蔵…土井先生に嫉妬してるんじゃないか?」
ニヤリと笑って三郎が問うた。
雷「はぁ?三郎こそ好きな子いじめるタイプだからなぁ、本当は嫉妬だったんじゃないか?ゆうきちゃん泣きそうになってたぞ。」
鉢「私は違うさ。まぁあいつ泣かすのは楽しいけどな。」
それはやっぱり気になってるからじゃないのか、雷蔵はそう思ったが口に出すのはやめておいた。きっと土井先生だけでなく、三郎にもよくない感情が生まれてしまうから…。