第7章 忍たま長屋
善「雷蔵、兵助。どうしたんだい?」
雷「ゆうきさんの荷物を持ってきました。」
久「あと部屋も決まったのでお伝えしに行くように言われました。」
善「そうかい、ありがとう。ゆうきさん、五年生の不破雷蔵君と、こっちは久々知兵助君です。」
2人がゆうきに向かってペコリと頭を下げる。
「あ…あ…。」
善「ゆうきさん?」
ゆうきは伊作の後ろに隠れ、忍び装束を握りしめた。その手はガタガタと震えている。
「いや…来ないで…来ないで!!」
雷「どうしたんですか?」
「ひっ…!」
久「もしかして雷蔵のことを怖がってる?」
善「でも何で…。」
雷「あ。もしかして…。」
雷蔵はそっとゆうきの方に歩み寄り、小柄なゆうきの目線に合わせて屈んだ。
「ごめんなさ…、ごめんなさい…」
雷蔵は、皺になるほど伊作の制服をきつく握りしめているゆうきの手を優しく取り、微笑んだ。
雷「ゆうきさん、よく見て。僕は不破雷蔵。鉢屋三郎じゃないよ。」
「ふぇ…でも…。」
雷「あいつと僕は同室で仲がいいんだ。あいつは変装の名人でいつも僕の顔を勝手に使っているのさ。」
雷蔵はやれやれと困ったように、でも嬉しそうに話した。
「…本当だ。全然違いました。」
久「え??」
「雰囲気が。雷蔵君はずっとやわらかいですね…すみません、取り乱してしまって。伊作君も、ごめんなさい。」
ゆうきはバツが悪そうに笑うと、改めて2人にお辞儀をした。
「雷蔵君と兵助君、これからよろしくお願いします。」
雷・久「「こちらこそ!!」」
久(しかし、三郎のやついくら曲者を捕らえるためとはいえ、どんな酷いことをしたんだよ…)