第19章 図書委員会
トントン
読書をしていた雷蔵は、戸を叩く音に顔を上げた。
「…雷蔵君、いる?」
雷「ゆうきちゃん!?いるよ、どうぞ。」
ゆうきは雷蔵の部屋の戸をそろっと開けた。
「こんな時間にごめんね。少しいい?」
雷「うん…どうしたの?」
雷蔵はゆうきと明日から顔を合わせるのが気まずいなぁ等と思っていた矢先に、その当人が自室を訪ねて来たため内心驚いていた。
「鉢屋君がいなくてよかった…笑」
ゆうきは冗談っぽく笑いながら、雷蔵と向かい合うように腰を下ろした。
「その、今日は迷惑かけちゃってごめんね。普段雷蔵君にはあんなによくしてもらってるのに…怒らせてしまったことが申し訳なくて…一言謝りたかったの…本当にごめんなさい。」
雷「そんな…僕の方こそ強く言い過ぎた…ごめん。」
少しの沈黙の後、お互い顔を見合わせて笑みがこぼれる。
「あと…ありがとう。味方してくれて。」
雷「え?」
「私に掃除を任せるよう…中在家君に頼んでくれて…嬉しかった。」
ゆうきがにっこり微笑む。
雷「あぁ…うん。」
それはゆうきを泣かせてしまった罪悪感からなのか、ゆうきがくノ一ではないという期待を捨てきれないがために出た行動であったのか、雷蔵自身も分かっていなかった。
そんなこと等露知らず、ゆうきは素直に雷蔵の行いを嬉しく思っていた。
雷「あ、ゆうきちゃん。そろそろ三郎が風呂から戻ってくると思うよ。」
「あ、じゃあ帰らなきゃ!雷蔵君また明日ね!」
スッキリしたのかゆうきは飛び切りいい笑顔で帰っていった。
静かになった部屋で1人、雷蔵は呟く。
雷「…中在家先輩、彼女には全くバレてないかもしれません…。」
そんな、心配になるほど人の良いゆうきに惹かれているのも事実。雷蔵は思わず苦笑するのであった。