幸運と悪魔を宿すグリモワールを持つ少年たちの妹ちゃん
第3章 貴族の家
~誰かside~
「お久しぶりです!兄上。またお会い出来て嬉しゅうございます」
やけに興奮気味の小太りの男。その男を一瞥し、シルヴァ当主は苛立たちそうに口を開いた。
「…ノゼルやソリドに見合い相手とは…お前は一体何を考えている?」
「私は常にシルヴァ家の繁栄を考えております! 」
その言葉に、ソリドやネブラはクスクスと笑いを隠しもせず零した。
「追放された身で、何かを申しておりますわよ」
「シルヴァ家を語れる身ではないと、分かっておらぬらしい」
男は甥や姪の言葉を無視し、ただ一心に兄に懇願した。1目でいい…その娘を見て欲しい、と。当主はため息をこぼし、そして娘を中へ入れるよう命じた。当主の最後の同情のつもりだった。しかし…
「…失礼致します…」
その娘が姿を現した瞬間、場はその娘に釘付けになった。白い髪を揺らしながら歩くその娘は、空色の瞳で脇目も振らず真っ直ぐ前を見ていた。整った容姿、白魚のような肌…その場にいる誰もが彼女に魅了されていた。しかし、その中で2人。シルヴァ家当主である者とその長男であるノゼルだけは、驚愕したように彼女を見つめていた。
「………貴様…名はなんと言う」
跪く彼女に、そうたどたどしく尋ねる当主。男はニンマリと笑みを零しながら答えた。
「クレアと申します。どうです兄上。この娘…まさに……」
「黙れ!!私はこの娘に聞いておるのだ!!」